『ゲヘナ 死の生ける場所』日本人監督の放つ秘境王道ホラー

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久しぶりの投稿です。
1年ぶりになりますが、ホラー映画ウォッチングは継続しております。

今回は久しぶりに記事を書きたくなる作品を見たので、紹介させてください。

『ゲヘナ 死の生ける場所』

予告編

映画『ゲヘナ』新予告編

編集部評価

総合評価:★★★☆☆

ギミック:★★★☆☆
様式美:★★★★☆
造形美:★★★★★
不気味さ:★★★☆☆
ストーリー:★★☆☆☆

みどころ

「じいさんホラー」に新たな1ページが刻まれた

ゲヘナの特筆すべき点を挙げるとすれば、もう「じいさん」。これに尽きます。

公式ポスターの謳い文句も「このジジイ、トラウマ級。」、、、

昔から、ばあさんに関するホラーは多くありました。魔女のモチーフと重なる点もあるからでしょう。『スペル』を筆頭に、『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』、日本でも『高速ばあば』など、いくらでも挙げられます。

しかし、ここ数年で「じいさん」の人気が急上昇。2016年の『ドント・ブリーズ』公開時は、誰に聞いても「とにかくじいさんが怖い」という感想しか帰ってこない異例の事態が発生しましたし、2017年『テリファイド』では異次元からやってくるじいさんというまさかの設定で人々を混乱に陥れました。

『ドント・ブリーズ』のじいさん
『テリファイド』の異次元じいさん

ゲヘナも、まさに「じいさんで魅せる」ホラーだと言えるでしょう。ポスターのじいさんだけでなく、序盤に出てくるサイパン人シャーマン(?)のじいさんも最高です。

この仮面、いったいなんの素材からできてるんですかねえ。

唯一無二のサイパン・ホラー

ハワイを舞台にしたホラーといえば、ミラ・ジョボヴィッチの『パーフェクト・ゲッタウェイ』がありますが、サイパンを舞台にしたホラーというのはひとつも思いつきません。今後もおそらく現れないでしょう。まさに唯一無二。スペインや日本に侵略された歴史がしっかりとホラーに描きこまれていて、その点もロケーションが“某所”なホラーと比べ深みが感じられました。

サイパンという舞台は新しいですが、作りは昔ながらの秘境系王道ホラー。そういう意味では、サスペンスメインの『パーフェクト・ゲッタウェイ』とは全く異なる映画となっています。もう散々手垢のついた、しかしだからこそ安心できる演出がたくさん盛り込まれていて、序盤は少年の頃のようなワクワク感を与えてくれます。

まず冒頭5分のシーン、スペイン人を生贄にして行われる儀式から見応えバッチリです。

手に持っているものは・・・本編で確認してみてね。

また、なかなかいい味を出していたのが、サイパンの現地人ガイドであるぺぺ。

彼は上司のアランにスネ夫のように付き従いますが、少しいたずら好きなところもあり、なんとなく憎めないキャラです。サイパンの先住民族チャモロ族であり、チャモロ語を話して霊媒のような役目を果たすシーンも。

ホラーのルールにおいては、現地のガイドはたいてい序盤で逃げてしまうか、悲惨な死を遂げます。これはもう秘境系ホラー定番の展開。

もちろん彼もこのあと大変なことに・・・。

最近はこの手のオリエンタリズムは敬遠されがちな映画界。現地の人がこれを見てどう思うか考えると、僕も手放しで好きとは言いづらいところもありますが、久々に「古き良き」ホラーを見ているという気持ちになりました。

他には、サイパンのローカル性を演出するアイテムとして、ボージョボー人形というものが出てきます。

本編の謎を解く重要な鍵となるボージョボー。
色調といい顔の作りといい、なかなかいい雰囲気を出してますよね。

ボージョボー人形は元々、チャモロ族に伝わる願掛け人形。つる草の実とココナッツの繊維でできており、手と足の結び方により恋愛運、健康運、子宝など様々な願いを叶えてくれる、、、らしいですが、本編では「立ち入るな」の意味で結ばれたボージョボーが大量にフェンスに結ばれていたり、そんなおめでたいものには見えません。

しかし、こんな不気味な人形がサイパンにありましたっけ?と思い調べてみると、、、

いや、全然ちがいますやん

メガホンをとった造形のプロ 片桐裕司

本作の監督は、なんと日本人!

監督の片桐裕司は、高校卒業後に単身で渡米、現場で力をつけた実力者。ハリウッドの特殊撮影で活躍するスクリーミング・マッド・ジョージに師事し、その後『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』や『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』など、第一線で活躍しています。

『パシフィック・リム』のロボット造形も片桐さん、、、と言えば、恐怖電影通信社を見てくださってる方は、片桐さんがどれだけすばらしい仕事をされてるかよく分かりますよね。

もともと『死霊のはらわた』や『ゾンビ』が好きで特殊造形の世界に入ったようで、本願はアーティストではなく映画監督。今回クラウドファウンディングで、1度失敗を乗り越えてとうとう初監督作品に漕ぎつけた作品が、この『ゲヘナ』。気合が入っているわけです。

ゲヘナで注目を集め、現在はすでに新たな作品を監督、また脚本執筆中の作品もあるようです。国内の日本人監督とは明らかに経歴・作風が異なりますので、今後が楽しみです。

異形の男 ダグ・ジョーンズ

「じいさん」のすごいところは、監督の特殊造形だけではありません。実は、じいさんの中の人もすごい。演じるのは、ダグ・ジョーンズ

名前に聞き覚えが無い方も多いと思いますが、実は彼はギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』で半魚人を演じた俳優。アカデミー賞4冠には美術賞も含まれていますから、造形の一部であるダグ・ジョーンズは実質アカデミー賞俳優と言えるでしょう。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人

デル・トロと言えばクリーチャーですが、ダグはデル・トロ作品の常連。デル・トロいわく「言葉を発さない、言葉で感情を表現できないこの役を演じられるのは彼しかいない。彼はその体の動きや瞳で多くの感情を表現するんだ」。初期作品の『ミミック』(1997年)から数えると20年にも渡りタッグを組んでいる二人。

『パンズ・ラビリンス』のペイルマンも、ダグ・ジョーンズ。ちなみにパンも彼が演じています。


デル・トロ作品以外にも『ヘルボーイ』のエイブや『スタートレック』サルー、『ファンタスティック・フォー』シルバーサーファーなど、、、数多くの作品に特殊メイクで出演しています。

これは知らなかったのですが、『バフィ 恋する十字架』や『X-ファイル』にも怪物役でたびたび出演してたようなので、僕たち気づかずにダグ・ジョーンズを見ていたわけですね。

ちなみに初仕事は、あの有名なマックのCMだったそうです。

そんなダグ・ジョーンズのメイクをとった姿がこちら!

メイクをしてないのに、なんかこわい

さすがです。

おわりに

この作品、監督や俳優に紹介したいことが多く、本編の内容にはあまり触れていないのですが、実に手堅く作られた王道ホラーです。いちおうギミックはあるのですが、オチは勘のいい人やホラーを見慣れている人は、だいぶ序盤で予測できてしまうでしょう。しかし、この映画で楽しむべきはギミックではありません。

ゲヘナのよさ、それは「ホラー映画好きが撮ったホラー映画」の“思い”が、溢れて伝わってくる点に尽きます。『死霊のはらわた』や『ゾンビ』に憧れて特殊造形を始めたという片桐監督。ゲヘナには、そんなホラーファンの思い描く“エモさ”がたくさん詰まっています。

この映画をジャンルわけすると、実に難しい。パッと見は秘境系ですが、タイムリープ、日本軍、洞窟、ソリッドシチュエーション、そしてループなどの“エモい”部分が少しずつ、福袋のように詰め込まれています。それらがサイパンの歴史的・地理的背景をうまく利用してつながっているのは、本当に丁寧な仕事によるもの。

また、題材だけでなく撮影や特殊造形、時にはそのチープな作りなども含め、良き時代のホラーを踏襲しているようで「そうそう!この感じが見たかったんだよ!!」とグイグイ画面に引き付けてくれます。途中ぺぺが顔面をめちゃくちゃに潰されるシーンなどは、ボディホラーとしてもしっかり主張していました。

ここ10年ほどのギミックやストーリーに凝ったホラーに食傷気味のかたは、ぜひ『ゲヘナ』を見てみてください。


プライムビデオは今見れないみたいですね・・・



参考:

「Kickstarter」から生まれたサスペンスホラー映画『GEHENNA ~死の生ける場所~』片桐裕司×田島光二トークセッション ーCGWORLD.JP

【映画深層】「ゲヘナ~死の生ける場所~」で念願の監督デビュー ハリウッドで活躍の日本人造形アーティスト ー産経ニュース

【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード70:『シェイプ・オブ・ウォーター』で魚人を演じたダグ・ジョーンズ氏と『ゲヘナ』 ー3dtotal.jp

アカデミー賞を席捲した超話題作に登場する“半魚人”の素顔と、愛すべき“オタク”監督お気に入りの東京スポット。 ーVOGUE

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