意外と知らない定番ホラーがテーマの「ホラー入門」。第1回は、溢れるほどの都市伝説に色とりどりのホラー俳優、いいとこどりのお子様ランチ、『ルール』をご紹介。
予告編
恐怖電影通信社でアルバイトを始めて3か月、ホラー映画をたくさん見るよう言われてるけど、何から見始めたらいいのか…。
あれ?こんなところにDVDが。誰かしら。
とある大学で、都市伝説を模した殺人が発生。学生たちは面白がって噂話に興じるが、被害者の名前を聞いたナタリーだけは様子がおかしい。友人が次々に被害に遭い、追い詰められていくナタリー。犯人はいったい誰なのか…。
ガツンと来るオープニング
面白かった…。
お、八重さん『ルール』見たんですか。
はい、オープニングからいきなり面白かったです。
『ルール』はこのような場面から始まる。
車をとばす女子大生。ご機嫌に歌っていると、ガス欠になってしまう。ギリギリでガソリンスタンドに滑り込むと、店員がなんだかおかしい。人相が悪く、服装もみすぼらしい上に、キモイ喋り方…この男、あまり関わりたくない。
「満タンで」
男はガソリンを入れながら、目を丸くして車内を覗いている。何コイツ…はやいとこ車を出そう。カードを渡し清算させに行くと、戻ってきた男はカード会社から電話があったから事務所まで来い、と言う。
こわごわと事務所へ入ると、男が後ろ手にカギをしめるのが見える。不安に思いながら電話を取ると、聞こえてきたのは、
「ツー…ツー…ツー…」
電話は繋がっていなかったのだ。
騙された。逃げないと襲われる。女子大生がガラスを破り必死で走り出すと、後ろから追ってきた男が大声で叫ぶ。
「待って!待ってくれ!」
女子大生は耳も貸さずに車へ乗り込み、エンジンをかける。助かった…。走り出す彼女のすぐ後ろにあらわれる、斧を持った怪しい影。
走り去ってゆく車を見ながら、ガソリンスタンドの男は言う。
「後部座席に…斧を持ったヤツがいたんだ…」
翌朝、彼女は新聞の一面となった。
『女子大生、殺される』
都市伝説のギフトボックス!!
冒頭から(言葉の通り)アクセル全開の都市伝説で始まり、気分を盛り上げてくれる。翌朝、その“怖い話”を種にうわさ話に花を咲かす若者たちが、「まさか自分たちが?」とだんだん怪異に巻き込まれていくシナリオのパターンも古典的で、デパートのレストランでお子様ランチを頼んだ時の安心感とワクワクでスタート。
次々に起こる殺人事件は、どれも都市伝説を模したもので手が込んでおり、見ていて飽きない。次はどの都市伝説だろう?この展開は、もしかしてあの都市伝説?自分が聞いたことのある話と照らし合わせながら、画面にくぎ付けになってしまう。
まるで、タコさん型のウィンナー、ピラフの山に刺さった旗、プリンの上に載ったホイップクリームのついたサクランボ、そしてシュワシュワはじけるメロンクリームソーダ、全部そろったお子様ランチを食べているかのようなドキドキ感が味わえる。
都市伝説 “ベビーシッターと階上の男”
中でも有名なのは、クラシック・ホラー『暗闇にベルが鳴る』の元ネタとなった都市伝説「ベビーシッターと階上の男」だろう。
ベビーシッターの家に電話がかかってくる。電話をとると、奇妙な男からだった。気味の悪くなった彼女は警察へ電話をする。すると、逆探知をした警察は言った。
『今すぐ逃げてください!この電話はあなたの家の2階からかけられています!!』
(『暗闇にベルが鳴る』は、ブラムハウスがリメイク中今年のクリスマスには全米で上映される予定だ。詳しくは下の記事参照。)
都市伝説 “猫をチンしたおばあさん”
笑ってしまったのは、この都市伝説を使った“フェイント”だ。
寮で開かれるパーティの最中、愛犬家の男子生徒が犯人から電話がかかってくる。発信元をみると、電話は寮の2階の電話から掛けられていた。ベビーシッターの都市伝説だな!受けて立ってやるぜ!!そう息巻いて犯人の元へ急ぐ愛犬男子。しかし、電話越しに犯人はこう言う。
「残念、これは老婆が猫をレンジでチンする都市伝説でした!!」
レンジを開けると、そこにはバラバラになり四方に張り付いた犬の肉片が…。
ここのスピード感と駆け引き、そして誰もが知ってる超有名都市伝説を最高の形でホラーに落とし込んでくる機知には舌を巻く。
見どころは都市伝説だけじゃない
この映画、シナリオもけっこうしっかりしてましたね。
そう、見どころは都市伝説だけじゃないんです!
犯人は、無差別に殺人を続けているわけではない。なぜか主人公ナタリーの周囲の人間を標的としている。そして、ナタリーも誰にも言えない過去があるようだ。そんな犯人とナタリーの関係を探りながら、視聴者は犯人を推理してゆく。わりとしっかりとした造りのサスペンスなのだ。
誰もが犯人に見える中、一人一人容疑者たちが死んでいく様は、まるで『スクリーム』のよう。この疑心暗鬼を生む緊迫感は、90年代スラッシャーの特徴。
『ルール』にはゴーストフェイスのようなアイコニックな仮面こそ無いが、90年代の生み出した“サスペンス・スラッシャー”の良作の一つに数えて良いだろう。
豪華な俳優陣!
もう一つの見どころは、新旧多くのホラー俳優たちが出演している点だ。80年代のあのアイコンから、その後2000年代に活躍することになったあの人まで、幅広い俳優が出演している。
『チャイルド・プレイ』のあの人。
ガソリンスタンドの“怪しい男”を演じるのは、『チャイルド・プレイ』のチャッキーでおなじみのブラッド・ダーリフ。
そのやばそうな風貌と不吉な“声”を生かし、冒頭からしっかりと心をつかんでくれた。
『エルム街の悪夢』のあの人。
大学で都市伝説の研究をしているウェクスラー教授役で登場したのは…。
ロバート・イングランド!いつものあの姿に慣れ親しんでいるのでなかなか気づかないが、何を隠そう彼こそがフレディ!壇上で講義するナイスミドルでダンディな姿を拝むことができる。
『ハロウィン』シリーズのあの人
ハロウィン4、5でローリーの娘ジェイミーを演じたダニエル・ハリスも出演。ホラー生まれホラー育ち、まさにホラー畑生まれの彼女。
可憐ながらも気丈にマイケルと戦う姿が印象的だったジェイミーとは打って変わって、リチウム剤中毒のパンクなルームメイトを演じている。
最近では『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でマンソン・ファミリーの一員であるエンジェルを演じている。
『スーサイド・スクワット』のあの人
大学新聞の記者ポールを演じたのは、アカデミー賞受賞歴もあるジャレット・レトだ。まだ駆け出しのころで、後年自分がジョーカーを演じることになるとは知らない。長髪のイメージがある彼だが、このころはまだ正統派イケメンだ。
『シャークネード』のあの人
最後に、大学ラジオのジョッキー、サーシャを演じたタラ・リード。この映画の後、『アメリカン・パイ』などの映画にポツポツと出演しているが、ある映画で空前の大ブレイク!!
それはサメ映画のカルト的人気に火をつけた『シャークネード』。主人公フィンの元妻エイプリルを演じ、ホラー界で衝撃的な復活を果たした。
シリーズを追うごとに進化してゆく彼女は、今やホラーファンにとってはターミネーター級の人気を評している。もはや都市伝説級の存在だと言えるだろう。
どの映画も面白そう。それに個性的なキャストが多いので『ルール』に出演した時と比較すると楽しめそう。
そういう意味でも、ホラーの良いとこどりのギフトボックスですね、この映画は。
この映画で、少しホラーへの関心が持てました。DVD、ありがとうございます。
え?僕じゃないですよ。
ムニャムニャ…zzz