クローバー・バースのゼロ地点

「クローバーフィールド/HAKAISHA」
(アメリカ/2008)

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「クローバーフィールド/HAKAISHA」


予告編

クローバーフィールド/HAKAISHA(字幕版)

編集部評価

総合評価:★★★★☆

ギミック:★★★★★
様式美:★★★☆☆
不気味さ:★☆☆☆☆
ストーリー:★★★☆☆


編集長の一言

考察が楽しすぎるシリーズの第一作。

小世の関連作品のすすめ

続編の「10 クローバーフィールド レーン」そして「クローバーフィールド パラドックス」。エイリアン・コズミック・ホラーの原点「エイリアン」遊星からの物体Xもおすすめです。また、都市をモンスターが暴れまわる“モンスターパニック”がお好みなら、パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の出世作「グエムル」をどうぞ。




あらすじ

 タグルアト日本本社への栄転が決まったロブ。しかしそれがきっかけで、彼は親密な仲であったベスとの交際を諦め、彼女と距離をおいていた。友人が開いてくれた見送りパーティで二人は出くわすが、ベスは長く連絡をとらなかったロブに怒りをぶつけ、パーティを後にする。その姿を見た兄ジェイソンは、ロブが本当はベスを愛していることを見抜き「仕事のことなんか忘れて、いますぐ彼女を追うんだ」と説得する。

 その時、大きな音と地震のような揺れがアパートメントを襲う。驚いて外へ出ると、ニューヨークは得体のしれない“何か”の攻撃に遭っていた。ブルックリン橋へ向かい避難する中、ロブはベスからの電話をとる。「動けないの……助けて…。」しかし、ベスの声はとぎれとぎれでよく聞こえない。

 ブルックリン橋についた彼らは、橋を渡りマンハッタンを出ようとするが、そこへ“何か”がやってきて橋を壊してしまう。先頭をきっていたジェイソンも巻き込まれ、橋とともに海へ……。大切な兄を失ったロブは、彼が言っていた通り、ベスを追うことに決める。


 
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調べるほど面白い“クローバー・バース”の世界


 JJエイブラムスの手がける「クローバーフィールド」は、「10 クローバーフィールド レーン」、そしてNETFLIXで公開された「クローバーフィールド パラドックス」と2つの続編を持ちます。これらの作品群は互いにゆるい関連性でつながっており、ファンからは「クローバー・バース」と呼ばれています。

 「クローバー・バース」各作品の特徴は、世界観の規模の大きさに対して、映画ではその世界のほんの端っこしか扱っていないという点でしょう。どの作品も、肝心となる情報を把握している登場人物は一切登場しません。彼らはあくまでも、事件の目撃者にすぎないのです。

 しかも各作品が完結しており、単品で見ても楽しめるようになっています。逆に言うと、どの作品も固有の情報がほとんど出てこず、前作を参照する必要がないんですね。そのため、映画の鑑賞後も世界観の全貌が明らかにならず、関連性すらよくわからないまま。

 しかし、このわからなさこそ、この作品を面白くしているのです。多くの疑問を抱えた観客が内容をネットで検索すると……どんどん情報が出てくる!!!それも、劇中では言及されない内容がたくさん。クローバーバースは、映画以外に情報を散在させることで、調べるほどに世界観が広がっていくというスタイルをとっているのです。いわゆるメディア・ミックスですね。

 それぞれの作品が巨大な世界体系の一部のみを見せているという意味では、ラヴクラフトの“クトゥルフ神話”に通ずるものがあります。私見ですが、JJエイブラムスは確実に影響を受けていると思います。また、人間には計り知れない“何か”による、理屈を超えた圧倒的な恐怖という意味では、ラブクラフトの説いたコズミック・ホラーを体現した作品でもあります。



タグルアト社の“謎の映像”


 その情報の中でも最も重要だと思われるのが、「クローバーフィールド」公開前にネットで公開された、“謎の映像”です。この映像は、主人公ロブの務める日本企業、タグルアト社に関するニュースなのですが……。

謎の映像
サムネイルから既に不穏な空気が……

 映像に出てくる鳴き声は、どう考えても「クローバーフィールド」の“何か”。タグルアト社についての細かな設定は、マンガ版(クローバーフィールド KISHIN )などで明らかになっています。いくつかピックアップすると……。


  • 石油ビジネスで事業を拡大
  • 海底掘削の中、Seabed’s Nectar(海底の蜜)を発見
  • 海底の蜜は、中毒性のある化学物質
  • その後、海底の蜜を配合した“slusho”という清涼飲料を販売
  • 「クローバーフィールド」に登場するモンスターの血中には、高濃度の海底の蜜が含まれている。

 これらの情報から、おそらく怪物の覚醒は日本企業タグルアトのプロジェクトと関係があることが分かります。またそのプロジェクトは、どうやら中毒性のある“海底の蜜”を配合した“slusho”という飲料によるビジネスが発端になっているようです。



しっかりとした人物描写


 ここまでは関連作品を含めた「クローバーバース」世界観の魅力についてご紹介してきましたが、単体の作品として見ても楽しめるだけの魅力をこの作品は持っています。

 POVであることによりリアリティが出ているのはもちろん、上書き録画により撮影をしているという設定のため、殺伐としたシーンに 幸せだったころのロブとベスの映像が 時折はさまり、非常にいい味を出しています。

 しかし、僕が特筆すべきだと思うのはその人物描写。

 ジェイソンの死後、兄が死んだというのにロブは何も言わず、かたくなにベスを助けに行こうとします。初めは「薄情者!」「早く逃げろ!」と思いながら見ていたのですが、母に兄の死を告げたロブが、堰を切ったように泣き始めたのを見てハッとしました。ロブは、兄の生前の言葉を実行していたのです。

“Forget the world,” and hang on to the people that you care about the most.

なにもかも忘れて、大切な相手にしがみつくんだ。

 ジェイソンの死を通して初めて、ロブはこの言葉の意味に気が付いたのでしょう。ためらっていては、二度と会えないかもしれない。皮肉にも、この言葉を残したジェイソンのように。そして、その言葉を実行することこそが、彼にとって兄への追悼だったのではないでしょうか。

ここで「兄さん…ぼくはやるよ」とか言ってなくて、本当に良かったです。

SFやホラーでは、話の筋に集中できるよう、人間の感情は分かりやすく解説されちゃう傾向があるからね。こういった丁寧な描写は珍しいよね。



鑑賞後のみなさんへ


 メディアをまたがった様々な情報からの分析が楽しい「 クローバーフィールド」。散り散りになった情報はあれども、“正解”の解釈は示されていません。そのため是非皆さんには、様々な情報を見て自分で考察を楽しんでほしいと思います。

 各情報は『クローバーバース百科』をご覧ください。来たるべきクローバーバース第4作へ向け「クローバー・バース」にまつわる情報をwiki形式で 随時更新していきます。 情報自体は「Cloverpedia」という海外のサイトを参考にしています。

 また、組み立てた自説をtwitterなどで投稿してください。恐怖電影通信社公式アカウント(@horror-press)にメンションしていただければ、一緒に考察に参加させていただきます!


 






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ではまた次回、お会いしましょう。


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