「プレゼンス」
予告編
編集部評価
総合評価 / ★☆☆☆☆
ギミック:★★☆☆☆
様式美:★☆☆☆☆
不気味さ:★★☆☆☆
編集長の一言
倒れるだけで腹筋ワンダーコア姉さん。
小世のおすすめ関連作品
ヨーロピアンなPOVであれば、「地下に潜む怪人」は必ず見てほしい作品です。リアリティを求めるなら、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」。ありがちなPOVは飽きた、という人は「トロール・ハンター」や「ヴィジット」をどうぞ。
あらすじ
これは、ドイツのホーナウ城で回収されたビデオだ。ドライブ中のカップルから映像は始まる。デートだろうか。大学生のレベッカは、彼氏のマークスがどこへ連れて行ってくれるのか、わくわくしている。ところが、途中で友達のルーカスが車に乗り込んでくる。「どこへ行くの?」「ついてからのお楽しみさ」
ここでいきなり車線を変えてくるトラックが、一番怖かったですね。
確かにここは怖かった。
着いた先はまがまがしい古城。 残念ながらこれは、デートなどではなくオカルト探索。マークスは文化人類学の卒業論文に使うため、心霊映像を撮りに来たのだ。ここでは、娘をレイプした伯爵が、生まれてきた不倶の子供を娘ともども生き埋めにしたという伝説が残っており、それからというもの城に入ったものには様々な災厄がふりかかっていた。
「私が怖がるのわかってたでしょ?」イライラするレベッカに対し、盛り上がったマークスとルーカスは、寝室にカメラを設置する。その夜から、映像には乱れが見られるように。初めは面白がっていたマークスとルーカスだったが、次第に悪夢やポルターガイストに悩まされるようになる。
あとはこの現象がエスカレートしていくだけ。
カメラ目線なポルターガイスト
POV+ポルターガイストという、ドイツ産パラノーマル・アクティビティな造りになっている本作。 最大の見どころは、自己顕示欲MAXのポルターガイストです。
直接映像にハックしノイズを起こしたり、遠隔で映像をスイッチしたりしてくるのですが、とにかく自意識過剰。たまたま映り込んじゃった、という感じではなく「見てるんだろ?」とばかりにガンガン映像を乱してきます。こんなにカメラ目線なポルターガイストは初めて見ました。
登場人物を脅かすという任務以上に、映画の観客を脅かそうとしています。
これって監督の意図が幽霊の行動を通して透けて見えてしまっているということなんですよね。「こうやったら驚くだろ、とりあえず入れとこ。」という。高校の文化祭で、学生が楽しみながやってるのが透けて見えるお化け屋敷みたいなもんですね。
幽霊がサービス精神旺盛というのはPOVとしては失敗だと思いますが、友達と騒いで見る分には十分な作品だと思います。
物理攻撃してきます
このポルターガイストのもう一つの特徴は、そのフィジカル(身体的)な攻撃方法。
まずポルターガイストの自己紹介、ラップ音。ドアや上階からドンドンドン!と聞こえてくるわけですが、この音が異常にでかい。どう考えてもチンピラが調子に乗って足を踏み鳴らしているとしか思えません。心霊現象というより、押し入り強盗的な恐怖を感じさせます。
一番際立っているのは、終盤、友達のルーカス君が足を引っ張られるようにカメラ外へフェードアウトするシーン。どうなる!?ルーカス。と思って見ていると、
「ああーっ!」
ボコッ。ドカドカッ。
「あー!うぁーー!!」
ボコスコ。ゴン!ボコボコッ。
「(。´・ω・)ん?」
音から判断すると、どうやらタコ殴りにしているようです笑
その後放火され、火だるまになるルーカス。
インドの暴行事件でしょうか。
たまにニュースになってるやつね。
古城設定をもう少し生かせていれば……
POVでは初?古城を舞台にしており、ヨーロッパ、地下牢と良い要素がたくさん出てきたので、もしかして「地下に潜む怪人」みたいな迷宮ホラーになるかと一瞬期待してしまったのですが、その設定は全く生かせていませんでした。
甲冑くらい動かしてほしかったですが、Veynau城という実在の古城でロケを行っていますので、おそらくこのロケーション代だけで資金がカツカツだったんでしょう。ちょっと厳しいようですが、低予算でやるならそもそも古城という設定の時点で間違っていたんです。
また、内装が最新設備すぎて、古城感がゼロです。冷蔵庫、風呂場、キレイな最新設備が整っており、非常に住みよさそう。
AirBnBで民泊にしましょう。
POVって、難しいんですね。
資金がかからず、なおかつ適当に撮ってもまあまあ怖くなるPOV。だからこそ本当に怖い作品を撮るのは難しいんだなと実感した作品でした。中途半端に臨むと全部同じになってしまいます。
僕は、面白いPOVは次の条件のどれかを満たしている必要があると思います。
- 完全なリアリティを追求する。
- テーマを追求する。
- 最先端のメディアを取り入れる。
このうち1は「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」がある以上もう出てこないでしょう。撮る意味があまりないですからね。既視感を逃れられないうえに、リアリティを追求すると物語としてはつまらなくなってしまいます。リアリティにこだわりつつも面白くしようとして失敗してる作品はたくさんありますけども(「グレイヴ・エンカウンターズ」がいい例です)。
そのため、実質今後のPOVは次の二つに収束していくんじゃないかな。
ひとつは、ワン・テーマを追求して観客にその世界への没入感を与える作品(「クローバーフィールド」や「トロールハンター」、「クリープ」など)。
もうひとつは、時代の最先端に目をつけ新たなメディアを採用し、それが社会にもたらす問題点にメスを入れるような作品(「アンフレンデッド」や「カム・ガール」、「コンジアム」など)。
「プレゼンス」も、折角の古城なんですから、予算があってテーマを追求できていたら、きっと面白い作品になったのではないかと思います。
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ではまた次回、お会いしましょう。