オカルト・ロマンあふれる目撃譚

「ブレア ウィッチ プロジェクト」
(1999/アメリカ)

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「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」

予告編

ブレア・ウィッチ・プロジェクト(字幕版)

編集部評価

総合評価/★★★★★
ギミック:★★☆☆☆
様式美:★★★★★
不気味さ:★★★★★

編集長の一言

エポック・メイキングな一品。

小世の予習のおすすめ

様々なPOV作品を見比べてみましょう。 「ジャージー・デビル・プロジェクト」は、本作と同時期に発表されたPOV。どちらが先か論争を巻き起こしました。他、本作に続き「パラノーマル・アクティビティ」も大ヒット。Netflixで見られる「クリープ」もおすすめ。



さっそくですが……


※この記事は、ネタばれを含みます。

どうした、急に。

それが…今まではの記事では、見どころ→ネタバレ含む感想、という順番で書いてきましたが、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ではどうあがいてもネタばれを避けれませんでした……。

まあ…ネタばれというと大げさだけど、何も知らずに見たほうが確実に幸せな映画体験ができるよね。

観てない人は、とにかくまず観てください。amazonで借りられますから。ウィキも見ちゃだめですよ。

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もう観ました、という方はどうぞ続きを読んでください。


鑑賞後のみなさんへ

どうでしたか?最高でしたよね。

まあ、ふつうかな。

いや、最高です。POVの最高峰なんですこの映画は。

君はPOV好きだからね。
でもこの映画、オチもないし、手振れで頭痛くなるし……。過大評価じゃない?

エンタメとしては評価が分かれるのは確かです。しかし、これだけロマンを与えてくれた映画は他にありません。その理由を説明しますね。

POVの原点にして最高峰

 そもそもPOVとは、“Point of view shot”の略。カメラの視線と登場人物の視線を一致させる手法です。“登場人物の撮った映像を私たちが見ている”という設定が可能なため、ホラー映画ではモキュメンタリー(にせのドキュメンタリー番組)を中心に使用が拡がり、作品にリアリティと没入感を与えてきました。

 その中でも最も成功を収めたのが「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」です。

 6万ドルの予算で作られたこの自主製作映画は、1週間の限定公開後に全米で話題沸騰。続々と上映館を増やし、4か月にわたるロングランとなります。全世界で2億4000万ドル、製作費の4000倍もの興行収入を記録し、“最も成功したインディペンデント・フィルム(自主製作映画)”の名を欲しいままにしています。

 ホラー映画産業ではそれに続けとPOV作品が続々と生み出されましたが「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を超える作品は現れませんでした。「パラノーマルアクティビティ」のように話題となった作品もありますが、どうあがけど“既視感”、“マンネリ感”を抜け出すことができなかったのです。こうしてブレア・ウィッチ・プロジェクトは、ミレニアル世代にとって、最初で最後の“豊饒な”POV経験となりました。では、この映画のなにがそんなに特別だったのでしょうか。

 なお、最近は撮影機材の発達や主要メディアの変化により、POVというジャンルに新たな風を吹きこんでいます。「アンフレンデッド」や「サーチ」、「 コンジアム 」などがそうです。

「この映画、本物?」

 なんの前情報もなくこの映画を見る人が、初めに抱く疑問。それは、この映画が本物か偽物かという問題です。素人が撮った“本当の映像”なのか、それとも監督と役者による作品なのか。

 結論から言うともちろん偽物。ウィキにもそう載っていますので、2018年段階で“本当の映像”だと思いながら観る人はいないでしょう。

 しかし、公開当時は違います。テレビやインターネット上で様々な情報が錯綜する中、誰もがこの映画が本物かどうかを議論しながら見ました。映画館上映されているわけですし、よく考えれば偽物だということくらい分かりそうなものです。では、なぜ人々は本物だと信じたのでしょうか。

 それは、メディアミックスというマーケティングの手法にあります。本作は、公開前にテレビCMなどのいわゆる“宣伝”は行われませんでした。かわりに、様々なメディアを通し、以下のような“企み”を実行したのです。

実名の失踪者を報じたウェブサイト

 映画の公開に先駆けて、ネット上にあるサイトが公開されました。それは、若者の失踪事件を扱うウェブサイト。ポスターの3人が、“ブレアの魔女”を追った実録映画の製作のさなか失踪したという情報が載っています。

 この時点ではまだ映画の情報は出回っておらず、また3人とも実名で出演をしているため、検索すると実在の人物であることがわかります。このような周到な仕掛けにより、この不気味な失踪事件は、あたかも本当の事件かのように人々に受け取られました。

 さらに映画公開後はIMDb(映画データベース)の出演者情報に“死亡”と記載。芸が細かい。その結果、ヘザーの母あてに多くのSympathy Card(お悔やみのお見舞い)が届いたそうです。

テレビ特番「ブレアの魔女の呪い」

 テレビでは、公開が3週間に迫ったタイミングで「ブレアの魔女の呪い」というドキュメンタリー番組を放送。魔女伝説と失踪事件について、専門家を交えまことしやかに検証するこの番組。既に失踪者のウェブサイトを知っている人は画面を食い入るように見つめたに違いありません。

 番組中には、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の映像が“失踪者の残したテープ”として断片的に登場します。その全貌が映画館で公開される!そう聞いたら、もちろん物好きはみんな見に行きます。この段階で、既にその映像の真偽が物議を醸し出していましたが、むしろその効果でより多くの人が映画館へ足を運ぶことになりました。

 版権の問題上引用はしませんが、“Curse of the Blair Witch”と検索するとユーチューブで見ることができます(字幕なし)。

 ちなみに、日本でも大鶴義丹が現地へ赴くPR番組が製作されました。

なぜ大鶴義丹?

番組の最後は、義丹さんが行方不明になって終わります。

義丹さ~ん!!!!

人々にロマンを与えたブレア・ウィッチ伝説

 以上の様々なマーケティングを通して、この映画は強烈に人々の心をとらえました。その要因は、本物の“怪異”を目の当たりにできるかもしれない、というロマンにあります。

 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は、この映画を見た人、見ていない人、見たくない人、あらゆる人を巻き込んで大きなムーブメントを起こしました。それは、日本でも昔人々をツチノコ探しに駆り立てたのと同じ仕組みで、人々にロマンを与えたのです。


「ジャージー・デビル・プロジェクト」の原題は、“The Last Broad Cast” 。邦題は明らかにブレア・ウィッチ・プロジェクトを意識したものに変更されています。

では、マーケティングがこの作品の全てかというと、そんなことはありません。内容にも際立った特徴がありました。

 当時、同時期に公開された「ジャージー・デビル・プロジェクト」との関連性が話題となりました。こちらは、ジャージー・デビルというUMAを追った番組クルーが惨殺事件に遭い、その真相を追求するというモキュメンタリー。

 “POV”そして“ モキュメンタリー ”、コンセプトが似ているため、なにかと比較される2作品ですが、そこには大きな違いがあります。「ジャージー・デビル・プロジェクト」には、オチがあるのです。それも、衝撃的なオチです。観客は、なるほど!そうだったのか!と納得し、映画は終わります。

 しかし「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は全く終わってくれません。 頭の中にはただ暗闇と疑問が残るだけ。1本の映画として、この結末にはガッカリした人も多いでしょう。そう意味では、断然「ジャージー・デビル・プロジェクト」のほうが面白い。

 しかし、観終わった後に次のような行動をとった人が少なくないのも真実です。
 そう、検索バーにカーソルを合わせて……。

 この分からなさが最高……と思ったのは僕だけでしょうか。

 身近な都市伝説や、小学校でまことしやかに語り継がれる怪談って、オチのない目撃譚が意外に怖かったりしますよね。「トイレの右から3番目の個室で、幽霊を見たんだって……。」ただそれだけの話でも、目撃譚の“お話”ではない語り口は、そこに行けば自分も見れるような気持にさせてくれるのです。それと同じ、“お話”ではない怖さがこの作品にはあります。

 映画としては、大きく評価が分かれる本作。最も信頼できる映画批評サイトとして有名なRotton Tomatoでも、批評家の評価は87%、観客の評価は55%と、大分差が見られます。

 びっくりしたい、すっきりしたい、完結してほしい……そういった映画を求める人には合わないでしょう。しかし、ロマンを与えるリアルなPOV体験という観点では、やはり史上最強の作品だと言えるのではないでしょうか。


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ではまた次回、お会いしましょう。


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