POVを新たな次元へ

「コンジアム」
(2018 / 韓国)

POV
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 みなさんこんにちは。

 小世(シャオシー)です。

 先日、新宿で暇ができたので、シネマートへぶらりと韓国の次世代ホラー「コンジアム」を見てきました。韓国映画はマークしておらず、前情報無しで見たのですが、かなり楽しめました


「コンジアム」

予告編

映画『コンジアム』予告_2019年3月23日公開!!

編集部評価

総合評価 / ★★★★☆
ギミック:★★★★★
様式美:★★★★☆
不気味さ:★★★☆☆


編集長の一言 

YOUTUBEとPOVの素晴らしい化学反応。

小世の予習のおすすめ

「グレイヴ・エンカウンターズ」 や
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」 などの
POVホラーを見ておくと、比較しながらより深く楽しめるでしょう。


韓国ホラーに旋風を?

 ぼくはこの3月まで3年間の間仕事で韓国に滞在していたので、韓国は馴染み深い国です。しかし、韓国のホラーは「コクソン」以外見たことがなく、コンユが主演して大ヒットとなった「新感染 ファイナルエクスプレス」も、まだ未見。韓国に住んでいても、韓国語ができないので、映画館に行っても洋画しか見れず……だからといってネットで探してまで見ようとも思えないんですよね。過剰商業化の進んだK-POPに辟易として、韓国のメディア全体から足が遠のいていた面もありました。

 そんな韓国メディアのイメージを変えてくれたのがこの映画です。

斬新でいて、古典的

 端的に言うと、新時代のテクノロジーがふんだんにつめこまれた、古典的な作品と言っていいかと思います。「古典的」というのは、精神病院廃墟という舞台や、霊をカメラに収めるために心霊スポットに潜入する若者たちというプロット、また人を驚かせるギミック、どれをとっても典型的なものが多く、ホラーが好きな人もそうでない人も安心して楽しめる内容になっていますので、そういう意味で古典的であると判断しました。

 一方で、ユーチューバーの主人公たちやその豊富な機材など、劇中に登場する新時代の要素が、古典的な作品に予想外の風穴を開けてしまいました。それがこの映画の見所だと思います。

その風穴とは、、、

POVの新たな可能性だな。

はい。陳腐化したPOVが、見事に息を吹き返しましたね。

 

POVに新境地

本作は、作中で登場人物が撮影したカメラの映像を私達が見ているという設定の、いわゆるPOV(Point Of View Shot)方式で撮られています。今まで「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「パラノーマル・アクティビティ」など多くの有名な作品がこの方式で作られてきました。しかし、低予算で作れる上に、モキュメンタリー(偽のドキュメンタリー番組)にすれば映像のクオリティが低くても作品が成立するため、二番煎じがたくさん出てきてしまいました。そのため、POVのホラー映画は食傷気味、という人も多くなりましたね。

まあ、二番煎じ映画はホラーでは名物文化であり、それはそれで楽しめるものだが……やはりつまらないものはつまらないな。

そうですね。かくいうぼくも、POVは大好きなジャンルではありますが、もうすでに古典化してしまい面白みは感じなくなっています。

 しかし本作の主人公たちは、人気ホラーチャンネル“ホラータイムズ”の生中継をするユーチューバーであり、なんと撮影している映像をリアルタイムで編集・配信してしまうのです。これは今までの典型的なPOVの、定点カメラ( 「パラノーマル・アクティビティ」 )やハンディカム(「ブレアウィッチ・プロジェクト」)の、撮れた映像を後で見ているという設定とは大きく異なります。

 作中で生放送が始まると、ユーチューバーたちの持つGoProや精神病院中に設置した定点カメラを、監督が常に編集してアップロードしていきます。時折CMやアイキャッチが挟まれたり、またユーチューブの閲覧ページが映されることもあり、「コンジアム」の観客である私たちは、「ホラータイムズ」の観客に同化していきます。

劇中劇の巧妙な罠

 POVは劇中劇と相性が良く、 「ブレア・ウィッチ」のように実際に制作までこぎつけなかったファウンド・フッテージ (撮影されたテープを誰かが見つけたという設定) や、「グレイブ・エンカウンターズ」のように作品自体が偽の番組として提示されたモキュメンタリーも、劇中劇というギミックを利用しリアリティを上げています。

 しかし、「コンジアム」が一味違うのは、今見ている映像が映画の監督によるものなのか、それとも劇中の監督によるものなのか、観客にはわからないというところにあります。ユーチューバーが番組内でヤラセの心霊現象を起こすことで、起きている心霊現象が「コンジアム」のギミックなのか、それとも”ホラータイムズ”のギミックなのか、わからなくなってしまうのです。これは生放送という設定でなければ、得られない効果です。なぜなら、すでに完成したテープでは、そのテープが丸々ヤラセという可能性を排除できないからです。

 ホラー映画とは、元々ヤラセの“作り物”です。だからこそ、今までのホラー映画は、リアリティを追求し“本物”の心霊現象を劇中劇に設定したわけです。それに対し、「コンジアム」は、敢えて同じ“作り物”を劇中劇に設定してしまいます。このように作品と劇中劇の間の境界をぼかした上で、さらに生放送という設定で本物の心霊現象が起きうる間隙を残しているのです。

 観客は、今起きたことはヤラセか???と疑った時点で、もうこの映画の罠にかかってしまっています。なぜなら、映画自体がやらせ(フィクション)なのですから。それにも関わらず劇中劇にその疑いをかけてしまうのは、映画自体への疑いをそらす、巧みなギミックが施されているからです。

 


鑑賞後の皆さんへ

 ※ここからはネタバレを含みます。

 いかがでしたでしょうか。

 韓国ならではのハイテック機材をどんどん積んでいく描写や、古典的なギミック・設定の数々、また上に描いたようなユーチューブ生放送の劇中劇が生んだ予想外の効果を体験できたので、ストーリー面で何も意外性が無かった点を鑑みても、個人的には非常に楽しむことができました。

 ただ、最後のオチで、マイナス★1です。結局誰も見ていなかったというのは……チープすぎます。それまでは、私たち観客の視点は、「ホラータイムズ」の観客の視点に同一化されていたはずです。これがPOVホラーの良さです。自分が映画を見ているという事実を忘れさせてくれる。あくまでも事実を、たまたま目にしてしまったような感覚。しかし、最後のユーチューブのコメント欄を見た途端、監督の演出を強く意識させられてしまい、ただの映画に成り下がってしまいました。

モキュメンタリーは、実在する番組として見るから怖いんです。ファウンド・フッテージも、事後的に誰かが見つけたから怖いんです。誰の目にも触れようがないのであれば、いったいなんのための映像なんでしょう……?それはもう、神の視点の普通の映画とかわらないのではないのでしょうか?

ではまた次回、お会いしましょう。

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